LANGUE.NET 随筆コーナー
外国語習得の要
筆者 中国アモイ在住 鷺江大学日本語学科教師
私は日本で英語と中国語を学び、英語教師として勤めてきました。また現在は中国で日本語を教えています。その立場で自国で外国語を習得する際に大切だと思うことを思いつくままに述べてみたいと思います。
まず第一にことばの本質は音声だということです。人間が他の動物と違うところは言語をもっていることです。人類は400万年の歴史があるといわれています。いいかえれば言語も400万年話されてきたということです。それは100%近く音声による言語です。書かれた言語も現在日常的に使われています。それでも言語活動のほとんどは音声によるものです。以上の点からも言語それ自体の性質からも言語の本質は音声なのです。外国語習得の際この本質をおさえて学ばなければなりません。外国語学習のテキストはほとんど書物です。その付属物としてカセットテープやCDがついています。それもあってつい文字中心に勉強してしまいますが、外国語の学習はあくまで音声を中心としたものでなければなりません。これはすべての外国語学習についていえることです。特に中国語を学ぶ日本人(日本語を学ぶ中国人も同様です)が陥りやすい過ちは、文字を見てわかることで、中国語がわかったつもりになることです。同じ文章をテープで聞いてもわからない。これでは習得になりません。やはりテープを聞いてわかるし、自分でもそういえるようになってはじめてわかったといえるのです。テープやCDを繰り返しなんども聞いて自分でもそのとおりいえるようにすることが大切です。その練習方法のひとつにシャドウイング(shadowing)という方法があります。それはテープを聞きながら、一瞬おくれてちょうど影のように繰り返す方法です。かなりの集中力が必要ですが、これもよい練習法だと思います。テープに入っている発話のスピードは、ごく初歩の段階を過ぎたら、自然で普通のスピードでなければなりません。おそすぎるものはよくありません。というのは自然のスピードで話されてはじめて理解できるという要素が言語にはあるからです。最初この自然なスピードにとまどっても、習得の近道です。
第二に言語は体得しなければならないということです。自動車の構造がわかり運転法を本で理解することと実際に運転できるのとは違います。そのためにもテープを活用しなければなりません。できれば実践(生活)の場面で使えると効果的だと思います。たとえばその言語を母語に持つ人で日本語を学びたいと思っている人と交換教授をする。これは工夫次第で効果的になります。日本語学校へ行くとそういう人を紹介してくれるかもしれません。
第三に集中的に学ぶことです。1日1時間10年間学ぶより、1日10時間1年間学ぶほうが数倍もいやもっと効果的に学べることはこれまでの多くの経験から明らかです。この点で語学を専攻する学生は恵まれています。恵まれた機会を生かさなければもったいないと思います。しかしこういうよい環境に恵まれている人は少ない。それでもそれぞれの可能な範囲内で力を集中したほうがよいことは明らかです。
第四に学習に対する姿勢態度に関する問題です。習得しようという意欲が基本になければなりません。意欲がなければいかによい方法を知っていても、どうにもなりません。だが強い意欲があっても途中でいやになることがあります。やはり楽しく学べて、常に意欲が高められることが必要です。そのためには志を同じくする同好の士と一緒に学ぶことが役立つと思います。週一回ぐらい自分に合った語学クラスの仲間と経験交流をし合いながら学ぶことはよい方法だと思います。さらに外国語を学ぶこと自体に楽しみを見出すことができれば、それにこしたことはありません。言語を習得する能力は人間だれしももっています。現にわれわれは日本語を話せます。本来ことばはそんなに難しいものではないはずです。たとえば日本語の<山>ということばを辞書でみると10以上に分類して説明してあります。しかし日本人はその10以上の意味に共通するあるものを把握しています。このような理解は単語だけでなく文法についてもいえることです。外国語を学んでいて、<ああ中国人はこういう風に物をとらえるのか>とか<こういう風に発想するのか>ということがわかると楽しくはないでしょうか。また、たとえ簡単なことばでもその国の人と話ができればうれしいものです。もし自由にその言葉で意思疎通ができたら、われわれの世界が広がるではありませんか。自分を励ますために自分に合った各種検定試験を目標にするのもよい方法だとおもいます。
筆者 中国アモイ在住 鷺江大学日本語学科教師
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